研究概要 |
Bacillus Calmette-Guerin(BCG)は結核症に対するMycobacterium bovis由来の弱毒化生ワクチンである。Molares(1976)が表在性膀胱癌患者の治療に初めてBCG膀胱内注入療法を施行して以来、表在性膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法単独の治療成績についていくつかの報告がある(Kelley et al.,1985;Akaza et al.,1991)。また、近年BCG膀胱内注入療法は表在性膀胱癌に対する直接効果のみではなく、経尿道的膀胱腫瘍切除術後の再発に対する予防効果もあり、現在、残存腫瘍や上皮内癌に対する治療として最も有用な免疫治療法と考えられている。しかしその反面、BCG膀胱内注入療法は頻尿、排尿痛、排尿障害などの膀胱刺激症状、肉眼的血尿及び発熱などの多彩な副作用が認められている。これらの副作用は大部分が一過性であるが、BCG療法の中止を余儀なくされる重症例も少なくない。さらに頻度的には少ないが、最も重大なBCGの全身的副作用としてBCGの他臓器への移行による肉芽性感染症(肺炎及び肝炎、BCG敗血症)がある。その治療には抗結核菌剤や加えてステロイドの併用をおこなうが、免疫系の低下した患者では、これらの治療が無効である為、より副作用の少ないBCG膀胱内注入療法が期待される。一方、これまで膀胱癌に対する膀胱注入療法の研究に適した実験モデルが様々報告されている。Kameyamaら(1995)はヌードマウスの後腹膜腔に異所性膀胱を移植し、この膀胱に設置したりザーバーから膀胱癌細胞を注入・生着させることのできるHeterotopic urinary bladder system(以後HTBシステムと略す)を報告した。BCG膀胱内注入療法で死菌が生菌と同様の効果を得ることができれば生菌の副作用を除き得る。そこで、これを評価するモデルとして、免疫系を有するC3H/HeNマウスにHTBシステムを作製して、BCG生菌・死菌により誘導されるサイトカインの測定と、その機序を検討した。あわせて膀胱癌細胞をマウス皮下に移植して、腫瘍に対するBCG生菌・死菌の抑制作用について検討した。
|