研究概要 |
Th細胞がサイトカイン産生により相互拮抗的なTh1/Th2細胞に分けられ、Th2細胞の自己増殖因子であるIL-4は移植片生着に重要な役割を持ちうる。[方法]マウスIL-4cDNAをMHCαプロモーター下流に組み込み、B6マウス由来のTgマウスを作製した。マウス心移植はC3Hの腹腔内に施行した。サイトカインmRNAはRT-PCR法にて検出した。[結果]3系統のFOを得た(_<4,>8,#12)。純系B6では_<4,>12ではF1にTgは伝わらなかった。#8では21%の頻度でF1以下に伝わった。Tg-B6と正常C3Hの交雑系では、Tgマウスの出生は_<4,>8にて50%,28%と上昇した。移植実験には#4系統のC3HxB6(Tg+/-)をドーナーに用いた。血清IL-4値(ELIZA法)は_<4,>8系統とも非TgとTg間で有意差はなかった。非TgマウスではIL-4mRNAは発現しないが、Tgマウスでは心臓と肺に発現していた。非Tgマウス心は移植後6.8±2.2日で拒絶されたが、IL-4Tgマウス心は19.0±9.1日生着した。移植後5日目においてTgマウス移植心にてIFNγ,IL-2mRNAの抑制(Th2 bias)がみられた。[考察]:IL-4発現Tg心をセミアロのマウスに移植することにより、移植心生着は延長した。免疫抑制剤の進歩により臓器移植の成績は目をみはるものがあるが、なぜ移植臓器が拒絶されるか、生着するかについては不明な点も多い。近年のサイトカイン研究の進歩から移植臓器の拒絶、生着のメカニズムが特にTh1/Th2サイトカインの立場から解明されつつある。今後はサイトカインを用いた拒絶反応の診断、制御やグラフト生着、トレランスの誘導が展開される可能性も秘められているのかもしれない。
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