研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,ヒト前立腺組織におけるkeratinocyte growth factor(KGF)mRNAの局在を非放射性in situ hybridization法により検討した。また,前立腺癌細胞株を用いてKGF mRNAの発現を検討した。未治療前立腺癌13例の検討では,2例で一部の癌細胞の細胞質にKGF mRNAの発現を認めた。11例では癌細胞でのKGF mRNAの発現は認めなかった。癌組織中の間質細胞でのKGF mRNAの発現は1例で認めたが,他の12例では間質細胞の数も少なく発現は認めなかった。同一検体内の肥大症部分でのKGF mRNAの発現は,13例中9例で間質細胞の細胞質に認めた。今回検討した13例はすべてreverse transcriptase-polymerase chain reaction法では,KGF mRNA陽性であったことより,非放射性in situ hybridization法の感度をさらに上げる必要があるものと思われる。前立腺癌細胞株を用いた検討では,PC-3ではKGF mRNA,LNCaPではKGF receptor mRNAの発現を認めた。 前年度の検討で,前立腺肥大症ではKGFが間質細胞で分泌され,パラクリン様式で腺管上皮細胞に作用していることが示唆されたが,前立腺癌の増殖においてもパラクリン様式もしくはオートクリン様式でKGFが少なからず関与しているものと推測される。
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