前立腺肥大症40例と前立腺癌50例を対象として、keratinocyte growth factor(KGF)mRNAとKGFreceptor(KGF R)mRNAの発現をreverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法を用いて検討した。前立腺肥大症では、14例(35%)でKGFとKGF mRNAの発現が認められ、9例(23%)で、KGF mRNAのみ、3例(8%)でKGF RmRNAのみの発現を認めた。残りの14例(35%)では両者の発現を認めなかった。前立腺癌では、24例(48%)でKGFとKGF mRNAの発現を認め、14例(28%)で、KGF mRNAのみ、6例(12%)でKGF R mRNAのみの発現を認めた。残りの6例(12%)では両者の発現を認めなかった。未治療前立腺癌30例では、KGF mRNAが21例(70%)に、KGF R mRNAが18例(60%)に認められた。一方、再燃例20例では、KGF mRNAが17例(85%)に、KGF RmRNAが12例(60%)に認められ、発現率に有意差を認めなかった。 前立腺組織におけるKGF mRNAの局在をin situ hybridization法により検討した。前立腺肥大症においては腺管周囲の間質細胞にKGF mRNAの発現を強く認めた。前立腺癌では、癌細胞でのKGF mRNAの発現を認めた。KGF RmRNAの前立腺組織における局在は現在検討中である。 以上より、大部分の前立腺肥大症および前立癌において、KGFおよびKGF mRNAの発現が確認された。前立腺肥大症では、間質にKGF mRNAが発言し前立腺肥大症発症および進展にパラクラインによるKGFの関与が示唆された。前立腺癌においては癌細胞にもKGF mRNAを認めることにより、前立腺癌のpathogenesisにはオートクラインによるKGFの関与も示唆された。
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