〔精子特異抗原HSAg-5の遺伝子クローニング〕 まず、既に配列の明らかになっているHSAg-5遺伝子3′末端からの約1000塩基の中から特異的な部分を選び出した。このDNA配列を合成してプライマーとし、クローンテック社のマウス精巣遺伝子ライブラリーを材料に、PCR法を施行した。しかし、何度繰り返しても、得られる増幅産物のDNA配列を解析してみるとベクターそのものであった。そこで、ライブラリーをストラタジーン社の製品に変更するとともに、カセットライゲーション法という方法を採用することとした。これは、種々の制限酵素で遺伝子を切断した後、各切断断片の両端に既知の配列のDNAを結合させ、この端の既知配列に対するプライマーと、標的遺伝子に特異的なプライマーとを用いてPCR法を行うというものである。だが、この方法でも、やはり増幅される配列はベクターであった。この段階で、ライブラリーを使うことは断念せざるを得なかった。 マウス精巣由来のmRNAを対象として、実際にRT-PCR法によってHSAg-5遺伝子が増幅できるかどうか確認した。その結果、確かなPCR産物が認められたため、今度は遺伝子ライブラリーではなく、マウス精巣cDNAを上記のカセットに組み込んで、クローニングを再開した。現在、得られたクローンの塩基配列を解析中である。 また、オリジナル抗体HSA-5はIgMに属し非常に不安定であったが、対応抗原HSAg-5蛋白質とともに精製条件を確立した。免疫アフィニティ精製法及びウェスタンブロッティング法では、HSAg-5は最大100kDaであったが、20-30kDaのフラグメントが最も安定で再現性よく回収できることが分かった。この蛋白質の部分アミノ酸配列を解析中である。 RT-PCR法によって、HSAg-5遺伝子がヒトセミノーマ組織に発現していることが確認できた。
|