研究分担者 |
七里 泰正 京都大学, 医学研究科, 助手 (20263080)
寺井 章人 京都大学, 医学研究科, 助手 (50243019)
吉村 直樹 京都大学, 医学研究科, 助手 (70230810)
筧 善行 京都大学, 医学研究科, 講師 (20214273)
吉田 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (70025584)
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研究概要 |
細菌性前立線炎の病態生理を解明するため急性細菌性前立腺炎由来株107株について血清型、7種類の病原因子遺伝子(pil,pap,sfa,afal,hly,cnf1,aer)の分布を解析した。この過程で一部の線毛(pap,sfa)には遺伝子的には相同性が高いが付着するreceptorが異なるvariantが存在することが明らかとなったためPCR法を用いた新しい解析法を考案してさらに詳細な病原遺伝子の同定を行い同時に表現型を確認し最終的に病原因子の分布を決定した。血清型の分布はは他の尿路感染症由来株と同様であり、また病原因子についても急性腎孟腎炎由来株と同様に健常人由来糞便株と比較し優位に高い遺伝子型・形質発現率を示した。このことより尿路病原因子が細菌性前立腺炎においても重要な役割を果たしているものと考えられた。特にF線毛、S線毛・F1C線毛が腎孟腎炎由来株と比べても多くに見られ大腸菌による細菌性前立腺炎の発症に何らかの関与を示す可能性が示された。さらに各線毛遺伝子をHB101株に導入して発現させ、それらの菌を標識して前立線凍結切片への付着の有無を調べた。MS,P(ClassII)線毛が特に強い付着を示したが、F線毛、S線毛・F1C線毛も付着を示すことが確認された。このことはより多くの病原因子を持つことが前立線管腔内に定着、さらに局所での感染を発症させるのに有利になるという仮説を裏付ける結果と考える。 また大腸菌を起炎菌とする急性細菌性前立腺炎の7症例で尿及び糞便中の大腸菌各50株のクロナリティーを病原因子の保有パターンとパルスフィールド電気泳動によるDNAフィンガープリントより比較し発症時には糞便中に起炎菌の見られないことを明らかにした。同様な解析を急性単純性膀胱炎10例、急性単純性腎孟腎炎12例についても行っているが、それらのうちの大多数では起炎菌は糞便株中で優位を占めていた。感染から発症までの期間などまだ不明な点もあるが、以上の結果は大腸菌を起炎菌とする急性細菌性前立腺炎が逆行性感染であることを支持する結果と考えられる。
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