研究課題/領域番号 |
08671811
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺地 敏郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (50207487)
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研究分担者 |
七里 泰正 京都大学, 医学研究科, 助手 (20263080)
小川 修 京都大学, 医学研究科, 助手 (90260611)
筧 善行 京都大学, 医学研究科, 講師 (20214273)
岡田 裕作 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20127062)
吉田 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (70025584)
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キーワード | テロメレース / 腎細胞癌 / chromophobe cell type / 膀胱移行上皮癌 |
研究概要 |
細胞の不死化にとってテロメレース活性は本質的な意味を持つのではないかと考えられている。実際に多くの悪性腫瘍で正常組織では認めないテロメレース活性が認められることや、肺癌や脳腫瘍で組織型とテロメレース活性の有無に相関が見られることが報告されている。 まず我々は腎癌の組織型によるテロメレースの陽性率、およびテロメレース長につきTRAP法、サザンブロット法により検討した。47例の腎細胞癌検体中、36例(77%)においてテロメレース活性が検出された。組織型別では、clear cell typeでは28例中26例(93%)においてテロメレース活性が陽性だったのに対して、chromophobe typeでは6例中1例のみであった。テロメレース活性とテロメア長の間には有意な関係は認られなかった。テロメア長を維持するメカニズムが組織型によって異なるか、または組織型によっては不死化していない細胞を含むものがあり得ると考えられる。特にchromophob cell typeは比較的予後がよいと考えられており、テロメレース活性の有無が腎細胞の生物学的癌悪性度、あるいは予後に関与している可能性が示唆された。 さらにテロメレース活性の測定を癌の早期診断に応用できないかを膀胱移行上皮癌において検討した。45例の膀胱癌患者から原発腫瘍42検体,尿中剥離細胞を自尿42、膀胱洗浄液43検体から採取し、TRAP法にて検討した。テロメレース活性の検出率は、G1腫瘍で、自尿45%(5/11)、洗浄液67%(8/12)、G2腫瘍ではそれぞれ、58%(15/26)、93%(25/27)、G3腫瘍で、60%(3/5)、75%(3/4)であった。これに対して、尿細胞診の陽性率はG1、G2腫瘍では各々8%、46%であり、尿中剥離細胞のテロメレース活性がG1、G2の膀胱癌をより高率に発見しうる新しいマーカーになることを示す結果を得た。 以上今研究でテロメレース活性が泌尿器科腫瘍の生物学的特性を反映しうること、さらに早期診断への応用への可能性を示したと考える。
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