本年度中に根治的腎摘出術を施行した胃癌患者のうちで、現在癌なし生存中であり、かつ癌細胞を継代し得た5例に対して検討を加えた。教室にて継代培養中の腎癌細胞株RC041293、RC082395、RC061792、RC010394、RC020793に、B7遺伝子をアデノウイルスをベクターとして用いて導入した後、1ml中あたり0.5から1.5単位のインターロイキン2を添加したE-MEM培地内で、4日から1週間の間、患者末梢血リンパ球と混合培養した。これにより誘導されたB7-CTL細胞の自己腎癌細胞にたいする殺細胞能を、51Cr-release法により測定した。これとは別に行った、遺伝子を導入していない腎癌細胞株で誘導したCTL細胞の殺細胞能と比較して、B7-CTL細胞、CTL細胞のいずれの殺細胞能も10から20%であり、統計学的な有意差は認めなかった。腎癌細胞株においてB7遺伝子が確実に導入され、かつまた発現しているか否か、モノクローナル抗体を用いたABC染色にてフローサイトメトリーにより検索したところ、導入率は40から60%と良好であった。 これとは別に、手術にて採取した腎癌組織および膀胱癌組織を、各種モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的手法にて染色し、浸潤リンパ球の程度を検索した。浸潤リンパ球は、CD8をCD4が取り囲むように分布しており、従来の報告と同じ結果になった。RT-PCRを用いた詳細な検討は現在進行中である。
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