平成5-7年度の科学研究費補助金一般研究(C)「メチルプレドニゾロンによるシスプラチン腎毒性発症予防に関する細胞科学的研究」において、ラット腎組織スライスを用いてメチルプレドニゾロンによるシスプラチン腎毒性の軽減作用の機序を検討したが、この実験系で得られた知見が他の実験系で得られる所見や臨床の成績に反映されることを確認した。すなわち、尿路上皮腫瘍に対するシスプラチン投与の際にメチルプレドニゾロンを併用すると、シスプラチンによるクレアチニンクリアランスの低下が軽減されるという臨床成績を示した。次の段階として、腎組織スライス法がシスプラチンだけでなく、他の腎毒性を有する薬剤の研究にも応用できることを確認する目的で、各種の抗生物質、抗癌剤、造影剤などの日常よく使用される薬剤の腎毒性評価を行っている。ラット腎組織スライスや手術によって得られたヒト正常腎組織スライスにセファロリジン、ゲンタマイシン、メソトレキセートなどの薬剤を添加して短時間培養を行って培養液中に出てくるNAGやγ-GIPなどの酵素を測定したところ、薬剤濃度を反映した酵素濃度の上昇がみられ、薬剤性腎障害のスクリーニングシステムとして有用と思われた。また、ヒト腎組織はラット腎組織よりもセファロリジンに対する感受性が低いことがわかった。造影剤腎障害については、各種の造影検査後の尿中NAG、γ-GIP排泄を測定し、腎機能との関連を検討している。腎組織スライスでの造影剤腎障害についても検討する予定である。
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