造影剤による腎障害を臨床的に検討した。非イオン性造影剤100mlを投与した症例を対象として、造影剤投与前と投与後1、2、3、7日目の尿中NAG、γ-GTP濃度を測定した。また造影剤投与前と投与後7日目の血清クレアチニン(Cr)とクレアチニンクリアランス(Ccr)を測定した。造影剤投与前後でCr、Ccrの有意な変化はなかったが、day1のNAG、γ-GTPは造影剤投与前と比較して有意に上昇した。対象症例をCcr70ml/minを基準として2群に分けると、腎機能低下群では、day3とday7の尿中のNAGレベルは腎機能正常群に比べて有意に高い値を示した。γ-GTPの上昇は両群で有意差を認めなかった。非イオン性造影剤によってCr、Ccrの変化としては表れないような腎障害が発生していることが明らかとなった。尿中のNAG、γ-GTPは、造影剤腎障害の鋭敏なを指標と思われた。 非イオン性低浸透圧性造影剤(LOCM)とイオン性高浸透圧性造影剤(HOCM)の腎毒性を腎皮質スライス法を用いて比較検討した。ラット腎組織より腎皮質スライスを作成し、造影剤を添加した37℃の緩衝液中で90分間培養した。溶液中の遊離NAG、γ-GTPを測定した。HOCMとしてdiatrizoate、iothalamateの2剤、LOCMとしてiopamidol、iohexol、ioversol、iomeprol、iopromide、ioxillanの6剤を用いた。すべての造影剤によって濃度依存性にNAG、γ-GTPの上昇が認められ、その上昇の程度は、LOCMとHOCMで有意差を認めなかった。ラット腎皮質スライスからの酵素逸脱による評価では、LOCMはHOCMと同等の腎毒性有することが示された。
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