1. メチルプレドニゾロンのシスプラチン腎毒性軽減に関して、作用機序を検討し、臨床応用を試みた。ラットにおいてメチルプレドニゾロンはシスプラチンの尿中排泄を促進し、腎組織プラチナ濃度を減少させた。臨床的にもメチルプレドニゾロンはシスプラチンの腎毒性を軽減した。 2. 腎皮質スライス法によりCefaloridine(CER)、Gentamicin(GM)の腎毒性を評価した。ラット、ヒトの腎皮質スライスをCER、GMを含む緩衝液中で培養した。CERではラット、ヒトの両者で溶液中のNAG上昇がみられたが、γ-GTP、LDHの上昇はなかった。GMではラットにおいてNAGのみ上昇した。ヒトでは遊離酵素の上昇はなかった。本法は迅速、簡便で、薬剤性腎障害の研究に有用と思われた。 3. 腎皮質スライス法によりcisplatin(CDDP)腎毒性を評価した。ラット腎皮質スライスをCDDPを含む緩衝液中で1時間培養した後、CDDPを含まない緩衝液に移して1時間培養した。溶液中のNAG、γ-GTP、LDHは有意に上昇した。ヒトでは遊離酵素の上昇はなかった。ヒト腎組織はラット腎組織よりもCDDP感受性が低い可能性が示された。 4. 造影剤腎障害を臨床的に検討した。非イオン性造影剤投与前後の尿中酵素を測定した。尿中NAG、γ-GTPは有意に上昇した。非イオン性造影剤による潜在的腎障害の発生が示され、尿中酵素は、その指標として有用と思われた。 5. 非イオン性低浸透圧性造影剤(LOCM)とイオン性高浸透圧性造影剤(HOCM)の腎毒性を腎皮質スライス法により比較した。ラット腎皮質スライスを造影剤を添加した緩衝液中で培養し、遊離NAG、γ-GTPを測定した。NAG、γ-GTPの上昇の程度はLOCMとHOCMで有意差はなかった。
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