研究概要 |
1.Nitric oxide(NO)消去作用を有する低毒性の有機化合物imidazolineoxyl N-oxide(PTIO)を用いてラット薬剤性(シスプラチン)腎機能障害におけるNOの病態生理学的役割について検討した。 2.薬剤性腎障害はWistar ratを用いシスプラチン10mg/kgを腹腔内投与することにより作製した。ラットはその後1)無治療群、2)NO消去剤(PTIO;10.mg/kg/min,60min)投与群、3)SOD(800units/kg)投与群、4)PTIO+SOD投与群に分け、これらの薬剤はシスプラチン投与日より連日3日間尾静脈より点滴静注した。経時的に血圧、尿量、腎機能、血中および腎組織内NO濃度(NO_2^-/NO_3^-)、腎組織中プラチナ濃度を測定し、各群間で比較検討した。 3.各群とも血圧の変動は軽微であった。シスプラチン投与群では、2日目より尿量の減少、血中、K、Cr、BUN値の増加およびクレアチニンクリアランス(CCr)の有意の低下、尿中蛋白、NAGの増加などの腎機能障害および腎組織中プラチナ濃度の上昇が観察され、血中、腎組織中のNO_2^-/NO_3^-濃度の有意の増加が観察された。一方PTIO投与群、SOD投与群では血中Cr値の増加およびCCrの低下、尿中蛋白、NAGの増加、腎組織中プラチナ濃度の上昇は有意に抑制された。またPTIO+SOD投与群では腎機能障害がさらに抑制された。血中、腎組織中のN0_2^-/N0_3^-の濃度はPTIO投与群とPTIO+SOD投与群では有意の減少を、SOD投与群では有意の増加が観察された。 4.以上の結果より、ラット薬剤性腎機能障害の発症機構にはNOとsuper oxideとが関係しており、特にNOとsuper oxideとの反応物質であるperoxinitriteが強く関与している可能性が推察された。またPTIOのようなNO消去剤がこの腎障害の発症の予防に有効である可能性も示唆された。
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