研究概要 |
228名の単発腎癌患者及び2名の両側腎癌患者にみられた合計232腫瘍についてフォンヒッペル・リンドウ病(VHL)癌抑制遺伝子の異常(体細胞性異常)を調べた。その結果139例にPCR-SSCP法で異常なパターンを検出したが,このうちの104例にVHL遺伝子の変異をシークエンス法で確認しえた。変異のみられた部位は遺伝子内のエクソン1に50例,2に23例,3に31例であった。また変異の種類はミスセンス変異28例,ナンセンス変異7例,塩基挿入(1〜28塩基まで)18例,塩基欠失(1〜29塩基まで)49例でVHL蛋白のC末側の切断を引き起こすような変異が多かった。腎癌組織型と遺伝子変異の関係をみるとVHL遺伝子変異は淡明細胞を含む腎癌にのみ認められ,その頻度は56%(104/186)であった。またこれらの遺伝子異常は腫瘍の悪性度(grade)及び進行度(stage)とは全く関係なく検出され,腎癌発生の比較的初期の段階の遺伝子変化と考えられた。 さらにこれらの腎癌についてVHL遺伝子近傍のマイクロサテライトマーカーを用いてヘテロ接合性の消失(LOH)について検討した。その結果LOHは淡明細胞型腎癌の73%にみられた。また色素好性(chromophobe)型及び色素嫌性(chromophilic)型の腎癌の一部にもLOHがみられた。 2例の両側腎癌(同時性1例,異時性1例)の遺伝子解析では全く同一のVHL遺伝子変異及びLOHが検出された。したがってこらの2症例では一側に発生した腎癌が対側腎へ転移したものと診断しえた。
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