フォン、ヒッペル、リンドウ病(VHL)癌抑制遺伝子の体細胞変異を、単発腎腫瘍患者228名及び両側性腎腫瘍患者2名に見られた合計232腫瘍について調べた。 SSCP-シークエンス法で遺伝子変異について、また遺伝子近傍のマイクロサテライトマーカーでヘテロ接合性の消失(LOH)について検討した。その結果この遺伝子の変異、LHOが淡明細胞を含む腎癌で高率に観察された。見つかった変異の位置は2番目のメチニンよりC末側でマウス、ラットのVHL遺伝子にも高度にアミノ酸が保存されている領域に限局していた。またVHL蛋白のC末端が切断される様な変異が多かった。これらの遺伝子変異、LOHは腎癌の悪性度(grade)、進行度(stage)に関わらず検出されており、この遺伝子の変化は淡明細胞型腎癌発生過程の比較的初期の段階に起きているものと考えられた。次にサザン法によりVHL遺伝子の再構成について検討したが、検出率は217例中1例で、腎癌でこの遺伝子の大きな再構成は稀と考えられた。 2例の両側性腎癌患者(同時性、異時性各1例ずつ)でVHLの変異解析を行い、腫瘍のクローン性について検討した。その結果、2症例とも同一の変異、LOHが認められ、これらの症例では一側に発生した腎癌が対側腎へ転移したものと診断した。 次に正常VHL遺伝子を、この遺伝子が不活性化している腎癌細胞株へ移入する実験(colony formation assay)を行い、この遺伝子が腎癌細胞の増殖を抑制する結果を得た。
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