研究概要 |
ヒトTR3オーファンレセプターはステロイドレセプターのひとつであるが、ヒト前立腺癌細胞においてmRNAの発現はアポトーシスを誘起するエトポシドなどの刺激によって30分から60分にかけてピークを呈する。また、TR3オーファンレセプターのantisense expression vectorを高発現させたstable transfectant cellsでは、アポトーシスの抑制が認められた(Endocrinology,1998,2329-2334)。 我々は、TR3オーファンレセプターのDNA結合エレメント配列であるNBRE(5'-AAAGGTCA-3')がhuman ciliay neurotrophic factor receptor(CNTFRα)のイントロン内にあることを同定した。ゲルシフトアッセイで解析したところ、そのエレメントは特異的にTR3オーファンレセプター蛋白が結合することを確認した。さらに、このイントロン断片をCAT reporter plasmidに挿入してCATアッセイを行うと、TR3レセプターの用量依存的にその活性の上昇が認められた。また、イントロン断片からNBREを除去してCATアッセイを行ったところ活性の上昇は得られなかった。以上の結果より、CNTFRαの発現はTR3オーファンレセプターにより調整されていることが推測された。これまでにTR3オーファンレセプターは、ヒト前立腺癌組織でとくに癌細胞に強く発現することをin situ hybridization法で確認しているが、CNTFRαの発現もまた前立腺癌組織で高発現しているとの報告もあり、このことからもTR3オーファンレセプターが前立腺癌の発生あるいは進展に関わっていると予想される。
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