研究概要 |
現在尿道の欠損した男児,すなわち尿道下裂に関して,動物実験モデルは確立をされていない。そこでわれわれは,ラビットの陰茎を用い,尿道下裂状態を作成した。その際,尿道およびその周囲の尿道海綿体のみを摘除し,その支持組織となる皮下組織はできる限り,温存するよう努めた。 次に,同ラビットを開腹し,膀胱前腔を明らかにした後,膀胱粘膜を採取した。この際この移殖すべき膀胱組織をできる限り尿道と同様の状態とするため,漿膜,筋層は,マイクロサージャリーのテクニックを応用し,一枚ずつ剥離して除去した。このグラフトをク-ロバイクリル系にて,縫合してチューブ状として,尿道欠損部分に補填した。これを皮下組織で被覆し,さらに皮膚を縫合して,尿道欠損部への膀胱粘膜移殖を終了した。 その後,インドインクを動脈内注入し,移殖した膀胱粘膜を摘出し,組織内へのインクの移行を光顕レベルで調べた。これによりインクは,周囲尿道組織と同様に移殖組織へも流入することが判明し,周囲組織からの血行あるいは尿道断端からの血行が推測された。移殖長期間後のものに関しては,手術成功が不可欠であるが,尿の流れる管腔であるため困難であり現在マイクロサージャリーを応用し,追試実験を行っている。
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