研究概要 |
まずはじめに,膀胱癌腫瘍細胞における増殖活性をフローサイトメトリーによるbromo-deoxyuridine(BrdU)/DNA二重解析により検討すると,BrdU高標識腫瘍は浸潤性が強くかつ,再発の危険性が高いことが明らかとなった。つぎに,5種のヒト膀胱癌細胞株を使用して,これら癌細胞の増殖活性誘導を試みた。Methotrexate(MTX)0.5-5mcg/ml濃度においては,KU-1,KU-7,NBT-2,T-24,KKいずれの細胞においてもbromodeoxyuridineの標識率が増加し,増殖が亢進された。一方,KU-1,NBT-2,KKの3種の細胞は顆粒球増殖因子(G-CSF)の受容体を発現しており,これら細胞にG-CSFを添加すると増殖率が亢進した。これら結果を基にKU-1,KU-7細胞に対し0.5mg/ml濃度のMTXを前処置した後0.05mcg/ml濃度のvinblastine(VBL)を添加した群と,同濃度のMTX,VBLを同時投与した群とにおける殺細胞性を比較検討した。その結果MTX前投与VBL接触群においてMTX,VBL同時投与群に比し高い殺細胞効果が認められた。同様にG-CSGは単独ではKU-1細胞において増殖亢進に働いたが,G-CSF前投与後MTXを接触させるとMTX単独投与に比しより高い殺細胞効果が認められた。さらに,ヒト膀胱癌腫瘍組織中におけるG-CSF受容体の発現の有無をin situ RT-PCR法により検討すると,26列の膀胱癌組成中6例(23.1%)においてG-CSF受容体のmRNAの発現が認められた。これら結果よりMTX前投与による抗癌化学療法レジメンの有用性が示されるとともに,一部の膀胱癌においてはG-CSF前投与後の化学療法を行うことにより,その抗癌効果増強の可能性が示された。
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