(1)後天性多嚢胞化腎(ACDK)の全割標本の組織学的検討:まずACDKを伴う腎臓の全対像を明かにするため、全割標本を用い組織学的検討を行った。平成8年12月までに透析腎癌51例58腎を摘出し、そのうちACDKを合併した34例41腎について最大割面を中心に、異型嚢胞、dysplasia、hyperplasia、metaplasia、adenoma、carcinomaの分布、局在を調べ、多嚢胞化腎のマッピングを行った。その結果、35腎に異型嚢胞、dysplasiagaiaなどが存在し、30腎に癌の多発を認めた。組織学的には乳頭状腫瘍、非淡明細胞癌の比率が高く、histological grade、DNA ploidyなどでは有意な差を認めなかった。 (2)病変部からのDNAの抽出:Shibataらのselective ultraviolet radiation fraction法を用い、パラフィン包埋標本からの染色体DNA抽出を試みた。(1)で行ったマッピングを基に、dysplasia、hyperplasia、carcinoma(adenomaはまだない)の各病変の染色体DNAを選択的に抽出し、現在、評価検討中である。また本年度摘出された10腎については、新鮮摘出標本の癌病変、各嚢胞壁上皮から検体を得、DNA抽出を平行して行っている。 (3)染色体DNAからのprobeの作成:現在、Isolaらの方法とTeleniusらの方法でACDKの各病変より抽出したDNA probeの作成に取り組んでいる。選択的に抽出可能なDNA量が少ないため、DOP-PCRを用いるTeleniusらの方法が有用と考えられる。基礎検討の段階であり、次年度に評価可能となる予定である。
|