欠損部を有する尿管の再建は泌尿器科領域における大きな問題の1つであり、今までに種々の人工材料の使用が試みられたが尿漏、吻合部の狭窄、痂皮形成、グラフトの移動、感染、異物反応、変形管腔構造の保持が困難、結石、グラフト外側の再生移行上皮を伴った結合織の形成等のため良好な結果は得られなかった。また生体材料として腸管、動脈、静脈等が用いられたが、現在臨床に用いられているのは腸管のみであり、しかも腸管は粘液産生、結石形成、吻合部狭窄等の欠点を有し優れたものとは言い難いのが現状である。本研究の目的は臨床使用に耐えうる代用尿管を開発することである。方法としては(1)基礎構築に細切した組織を自家移植する、(2)アルコール処理して抗原性をおとした同種動脈、尿管、(3)自己の膀胱壁を採取し、筒状にして用いる、の3種類を計画した。その組織片のサイトカインを活性化し、オートクリン及びパラクリンとして利用し移行上皮及び周囲の結合組織の細胞増殖・遊走を促進し、植え込み後早期に上皮化が完成し尿漏れが起こらず、遠隔期にも吻合部の狭窄が生ずることなく機能するものを目標として実験したが、サイトカインが充分に活性化されず、移行上皮の被覆は遅延し、現在、改良中である。(2)と(3)に関しては雑種成犬の尿管再建をin vivo実験において実際に行ったが吻合部のところで狭窄あるいは閉塞が起こり尿腫あるいは尿漏れを起こしたものもあり、現在改良中である。尿の生化学的性質が細胞の遊走を妨げ、その結果サイトカインのオートクリンの効果が十分発揮されていない。吻合部での急性期の狭窄に対してステントを入れて乗り切ることを現在工夫している。血行が悪い、細胞の遊走がそれほど望めない等不利な条件が多いが設計に改良を加えたい。
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