研究概要 |
生体腎におけるアンギオテンシンII(AII)の輸入・輸出細動脈径の経時的変化と糸球体径の経時的変化につき解析を行った。ニードル型プローブで麻酔開腹犬(n=5)の糸球体毛細血管にアクセスし手前に固定後、糸球体毛細血管内の血流を確認した。そして血行動態が安定した状態で、AII(20μg)を腎門部上腹部大動脈よりone shotで注入後糸球体イメージを得た。輸入細動脈(AII前の血管経:14.8±4.5μm),輸出細動脈(AII前の血管径:13.9±4.0μm)共に血管径が減少し,60秒で最小径(輸入径34%減、輸出36%減)を呈した。その後緩やかに血管径が増大しほぼ150秒で旧値に復した。輸入・輸出細動脈は,All投与直後にsegmentelに拍動脈振幅の増大した後,diffuseに血管径の減少をみた。なお,AII・前・中・後で心拍数の変動はなかった。AII投与後20秒で平均血圧は最大(増加率:18±4%)となり腎血流は最小(減少率:25±5%)となった。昇圧量での外因性AIIは共に生体イヌ輸入・輸出細動脈の拍動性を増大させ収縮せしめるが,両者のその程度の差はなかった。さらに糸球体径変化を観察するとAII投与後30secで糸球体径に変化が始まり90secで糸球体径は最大となり横径が19%(AII前125±31μm vs 後148±37μm)縦径23%(AII前124±18μm vs 後153±30μm)が増加した。180secで糸球体径はコントロールに復した。径増大に伴い血管極から尿管極へ向かう糸球体densityの上昇が生じた。AII投与により生じた糸球体容積の増大は輸入に比し輸出細動脈の血管径の収縮が強くすなわち相対的血管抵抗増大に基づく毛細血管圧の上昇に起因し、濾過圧の増大を意味する。糸球体の血管極のdensityの増大は糸球体前後径の増加によるが局所へマトクリットの上昇をも反映し、糸球体への酸素供給を意味すると考えられた。
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