研究概要 |
経腟超音波断層法により診断された頚管無力症(エコー上の頚管無力症)の症例を,入院の上,緊急的頚管縫縮術を行わずに保存的に治療し,頚管長を経日的に計測した.入院後の頚管長の変化を観察することにより,エコー上の頚管無力症が実際に今までの一般的な頚管無力症(臨床的頚管無力症),早産の原因となるかどうかを検討した. 対象は1995年8月から1997年6月までに,教室で経腟エコーにより頚管無力症と診断された7例の単胎の妊婦である.なお,同期間中,727例の妊婦に経腟エコーによる頚管無力症のスクリーニングを行った.エコー上の頚管無力症の頻度は1.0%(7/727)であり,3例(0.3%)が臨床的頚管無力症となり,そのうち1例(0.1%)が頚管縫縮術を必要とした.保存的治療に抵抗して外子宮口が徐々に開大してくる症例や,頚管長の変動が大きい症例は早産となる危険性が高かった.また,入院後,頚管長がほとんど変化しない症例の中には,外来で経過観察をすることが可能であった症例もみられた. 上述したエコー上の頚管無力症の7例中,4例が臨床的頚管無力症または早産と最終的に診断され,エコー上の頚管無力症の診断は臨床的頚管無力症・早産となる症例をスクリーニングする有用な手段と考えられた.一方,エコー上の頚管無力症の頻度は全妊婦の1.0%と、臨床的頚管無力症と比較して高いことから,各々の患者によって,保存的治療,経過観察,頚管縫縮術を選択することが将来的には必要と思われた.
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