研究概要 |
新たな習慣流産に対する治療法を開発する目的で,原因不明の,または自己免疫疾患や抗リン脂質抗体症候群によるヒト習慣流産に対するガンマグロブリン大量療法の有効性を調べた. 対象は,生児の分娩歴がなく自然流産を4回以上(平均4.5回)繰り返した原因不明の習慣流産11例(Group I)と,生児の分娩歴がなく自然流死産を2回以上繰り返した自己免疫疾患や抗リン脂質抗体症候群による習慣流死産3例(Group II)である.Group Iのうち,3例は前回の妊婦時に夫リンパ球免疫療法が施工され,3例とも胎児染色体が正常である自然流産に至った既往があった.本人並びに家族の同意を得て,ガンマグロブリン大量療法(50g/日,5日間,合計100g)を妊婦4〜7週(Group I)と6〜13週(Group II)に行った. 成績として,Group Iでは,11例中9例が生児を分娩(妊娠30〜39週)した.2例は稽留流産(妊娠6,7週)に至ったが,胎児染色体異常(46XX/48XX,+16,+20,92XXXX)が確認された.また,Group IIでは,3例とも生児を分娩(妊娠36〜39週)した.新生児所見として,生児12例中3例がSFDであり,また,1例が母体SLEによる新生児ループスと血小板減少症を呈した.母体にじん麻疹が1例で観察された以外,ガンマグロブリン大量療法にともなう副作用は観察されなかった. 結論として,Group I,Group IIの14例中,胎児側因子による自然流産2例を除き,12例全例で生児が得られた.ガンマグロブリン大量療法は,原因不明の,または自己免疫疾患や抗リン脂質抗体症候群による習慣流産に対して有効かつ安全である可能性が,本研究で明かとなった.
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