研究概要 |
現在に至るまでAFPの糖鎖部分に関しては不明の点が多く、AFPをエストロゲン依存性腫瘍の新しい治療法として応用するにあたり、AFPの糖鎖構造と悪性腫瘍、特に子宮体部癌との関係に関し検討を加える必要があると考えられた。2例の胃肝様腺癌の電気泳動を比較するとConA,E-PHA,allo Aにおいてほぼ同様のパターンを示したが、LCAでは全く異なっていた。卵巣および子宮体部原発肝様腺癌の電気泳動におけるCon A,allo Aでは3例とも比較的類似したパターンを示していたが、LCA,E-PHAにおいては原発臓器に特徴的な電気泳動パターンを指摘することは困難であった。しかし卵黄嚢腫瘍におけるAFPレクチン親和性電気泳動では、すべての卵巣原発卵黄嚢腫瘍でほぼ同一の泳動パターンを示し、腟原発卵黄嚢腫瘍も卵巣原発とかなり類似した電気泳動像を示していた。肝様腺癌におけるレクチン親和性電気泳動では、同一組織に発症した肝様腺癌での個々の症例のtumor heterogeneityに起因するAFPレクチン結合性の違いの他に、子宮体部原発肝細胞癌でyolk sac typeのglycoformを示したように、原発組織の違いに起因するAFPレクチン結合性の違いも混在している可能性が示唆された。また卵黄嚢腫瘍の電気泳動では、腟原発および卵巣原発ともに卵黄嚢腫瘍に特徴的とされるすべてのバンドを認めたが、E-PHA,allo Aにおいてわずかな泳動パターンの違いを認めた。発生母細胞がともに胚細胞であることと、それぞれの分化度にあまり大きな違いを認めないことが、卵黄嚢腫瘍のレクチン結合性の均一性をもたらした要因の一つと考えられるが、それらのわずかな違いがtumor heterogeneityによるものかtis suespecificityによるものかは、1例のみの結果で議論することは不可能であった。
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