増加傾向著しい子宮体癌・卵巣癌の発生・進展に関与する染色体欠失領域の検索

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08671861
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 佐藤 信二 東北大学, 医学部, 講師 (10142960)
• 研究分担者: 今野 良 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (70271905)
• キーワード: 子宮体癌 / 10番染色体 / 癌抑制遺伝子

研究概要

本研究の最終目的はヒト染色体のすべてを対象として、子宮体癌・卵巣癌における染色体欠失領域および遺伝子不安定性の原因の1つであるDNAミスマッチ修復異常とDNAレプリケーションエラー(RER)をテストすることにより検索し、婦人科癌における欠失領域の詳細な地図を作製することである。
我々は、これまで第10番染色体長腕のq25-q26領域が子宮体癌なかでも高分化癌で高頻度に欠失していることを見出し、詳細に欠失地図を作製したところ、Dl0S209とDl0S216の間に約8CM、Dl0S217とDl0S590の間に約12CMの共通欠失領域を認めた。次に酵母人工染色体(YAC)を用いて詳細に解析したところ、共通欠失領域は790kbのYACにより完全にカバーされていた。さらにこれらのYACからコスミドコンティグを作製し、得られたクローンを用いて、FISH法を行い詳しく解析したところ、共通欠失領域はl00kbという極めて狭い範囲に限局された。
本年度は他のグループとの共同研究により、同じ10番染色体領域に存在するPTENI遺伝子が子宮体癌の発生・進展に大きく関与している可能性を示した。すなわち子宮体癌の55%(38例中21例)において突然変異が認められ、これはこれまで報告されている他の遺伝子異常の頻度に比べて、格段に高い値であった。さらに、子宮体癌の前がん病変とされる子宮内膜異型増殖症においても突然変異が確認され、本遺伝子は子宮体癌発癌過程の初期に関与している可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Sato S, Konno R et al: "Mass screening for cancer of the endometrium in Miyagi Prefacture, Japan" Acta Cytol. 42. 295-298 (1998)
• [文献書誌] Sato S, Konno R et al: "Cytologic application of p53 overexpression using immunocytochemistry and confocal laser scanning microscopy" Acta Cytol. 42. 342-345 (1998)
• [文献書誌] Yoshinaga K, Sato S et al: "The PTEN, BAX, and IGFIIR gener are mutated in endometrial atypical hyperplasia" Jpn J Cancer Res. 89. 985-990 (1998)
• [文献書誌] Yamakawa H, Sato S et al: "Identification of a 100-kb region of common allelic loss on chromosome bands 10g 25-g26 in human endometrial cancer" Genes Chromosomes & Cancer. 23. 74-77 (1998)
• [文献書誌] Ito K, Sato S et al: "Immunohistochemical study of cyclins D and E and cyclin dependent kinase (cdk) 2 and 4 in human endometrial carcinoma" Anticancer Res. 18. 1661-1664 (1998)
• [文献書誌] Tanoguchi K, Sato S et al: "Immunohistochemical and tue-parameter flow cytometric studies of DNA to poisomerace II α in human epithelial ovarian carcinoma and germ cell tumor" Med Pathol. 11. 186-193 (1998)