研究概要 |
微量サンプル中のエストロゲン受容体mRNA(ERmRNA)の測定法を確立し、その有用度をすでに報告した.この測定法を用いてラット骨芽細胞様細胞(ROS17/2.8)培養系を用いてエストロゲン受容体発現の調節機構を検討した.定常状態におけるROS17/2.8中のERmRNA量は5.029±1.632mol/gRNAx10^<-13>であった.1,25(OH)2D_3添加によりERmRNAの発現は2相性の変化を示した.すなわち、生理的濃度のD_3添加によりERmRNA&は有意の増加を示したが、より大量のD_3添加では逆にERmRNA発現量は減少した.一方、ER蛋白の発現をWestern Blot法にて検討したところ、ER蛋白の発現はD_3の添加量と用量依存的に増加した.一方、ERmRNA発現に対しエストロゲンは有意の変化を及ぼさなかった.これらの結果から、骨芽細胞におけるERの発現はD_3の影響下にあり、D_3はERmRNAの発現量を増やすばかりか、そのtranscriptionをも増加させることが示された.我々はすでに、閉経女性の骨量減少は2相性に起こることを示し、閉経の初期にはエストロゲン欠落による骨量減少が、また閉経後10数年を経た女性ではカルシウム代謝異常に基づく骨量減少の起こることを示した.今回の我々の結果は高齢女性のホルモン補充療法にはビタミンDを併用することでその骨量予防効果を増強させることをしめす結果と考えられる. ヒトにおけるERα、βの特異的な内部標準品を作成し、定量的PCRを用いた測定法を開発した.この方法を用いて末梢白血球におけるERα、βmRNAの定量を試み、加齢による変化を検討した.加齢やエストロゲン存在の有無によりERα、βの発現量に差のある傾向が見いだされたが、確定するまでには至っていない.また、ヒト子宮内膜癌においてはERβの発現が見られ、悪性度の高い腫瘍でその発現が高かった。
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