マウス性腺の成熟、ならびに卵胞の成熟につき、preantral follicleをin vitroで培養することにより、性腺が、生殖能力を獲得する過程とその機構の解明を試みた。性成熟後の卵胞は卵胞成熟ホルモン(FSH)に反応するが、性成熟前の個体から得た卵胞は、FSH単独に反応せず、activin Aに反応して成長することを明らかにした。Activin Aは、性成熟後の卵胞においては、むしろ卵胞の成長を抑え、その抑制的な作用は、卵胞が無秩序に発育を始めることなく、順次、発育、排卵を遂げていくという事実に、必要不可欠なものと推測された。次に、成長ホルモンがIGFを介さず卵胞の成長に直接的な作用をもつ事を示唆する結果を得た。 またTGF βが、卵胞の初期の発育に重要な意義を持つことも明らかとなった。DES(diethyl stilbestrol)前処置は、従来顆粒膜細胞の生理学において、世界中で多くの実験データが蓄積されてきたが、この処理を行った後の卵胞においては、TGF βに対する反応が通常の卵胞とは大きく異なることを明らかにした。さらに、比較的大きな卵胞と、そうでない卵胞を分離培養、性腺刺激ホルモンに対する反応の違いを明らかにし、ヒトのPCO(多嚢胞性卵巣)のモデルである、androgen sterilized mouseからの卵胞において、特にLHに対する反応が特徴的に異なることを見いだした。これらの知見の多くは、権威ある英文雑誌に収載され、我々の行ったpreantral follicleの培養、およびそれから導き出される現象に、一定の評価がなされたものと考えている。さらに、生後2週頃の性腺刺激ホルモンの一過性分泌昂進を契機として、卵胞が成熟型に変化してゆくこと、またその時間的な経緯、人工的な性腺刺激ホルモン投与による変化、また卵胞の外側のtheca cellの増殖へのGHの関与、卵胞成長に対するfollistatinの興味ある作用等も確認、多くを投稿中であり、さらなる詳細な検討も引き続き行われている。
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