本研究では、家兔子宮内膜における着床期に一致したコレステロール硫酸(CS)発現の調節機序と機能について明らかにすることを企図した。第1に調節機序については、合成酵素であるコレステロールスルホトランスフェラーゼ(CTS)をクローニングし、その発現と活性化が如何なる因子により調節されているか解析する計画を立てた。まず、CST活性の高い肝癌細胞株より3種類のカラムクロマトグラフィーを用いてCTSを精製し、エストロゲン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)などのステロイドについて基質特異性を検討したところ、コレステロールに比べて他のステロイドに対しては硫酸転移活性が低く、従来の硫酸移転酵素とは別の酵素であることが示唆された。そこで現在、精製したCTSのアミノ酸配列に基づいてクローニングを行っている。第2にCSの機能につては、細胞レベルでは着床モデルを用いて胚盤胞の接着への関与を分析し、分子レベルでは細胞外マトリックスや細胞接着物質など細胞外の分子あるいは細胞内情報伝達系関連物質など細胞内の分子との関連を解析する計画を立てた。その結果、CSはトロホブラストの発育に対しては抑制的に作用することが確かめられた。また、着床期に重要な役割を担うプロテアーゼに対するCSの作用を検討したところ、プロテアーゼの中でも特にプラスミン活性の抑制効果が認められた。以上より着床期子宮内膜に発現するCSは胚盤胞の接着、浸入、発育を直接制御する生理活性を持つことが示唆された。
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