HPV陽性子宮頚癌の予防・治療を目的とした分子疫学的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08671872
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 吉川 裕之 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40158415)
• 研究分担者: 恩田 貴志 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (40251269)
• キーワード: 子宮頚癌 / HPV型 / 患者年令 / 組織型 / 予後

研究概要

子宮頚癌に検出されるHPV型がその臨床像に関連しているかを研究した(Cancer,78;1935-1941)。子宮頚癌146例(進行期lb期以上)をHPV16陽性を16群(55例)、HPV18陽性を18群(27例)、16型、18型以外のHPV陽性をO群(47例)、HPV陰性をN群(17例)とした。主に年齢、組織型、予後について検討した。対象の年齢分布は、20才代5例、30才代14例、40才代25例、50才代35例、60才代35例、70才代21例、80才以上11例で、平均年齢57才である。年齢は18群は16群、O群に比べ有意に若く、ピークにおいても18群は40才以前に、16群は50-70才に、O群は60才以降であった(平均年齢は16群;56.2才、18群;46.1才、O群;63.0才、N群;57.7才)。18群が若年である理由はHPV18感染から癌化の期間が短く、O群が高齢者が多いのは、16型、18型以外のHPVは癌化過程が長いと推論される。組織型の分布では、腺癌・腺扁平上皮癌の頻度が18群では48%であったのに対し、16群、O群ではそれぞれ、13%、9%であった。感染段階からのターゲット細胞が異なる可能性もある。また予後に関しても、18群は有意に16群、O群に悪く、その傾向は扁平上皮癌に限っても同様であった(進行期、リンパ節転移率は各群差なし)。以上より、子宮頚癌に存在するHPV型は臨床像と密接に関連していることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Nagano,H.,Yoshikawa,H.:"Association of multiple human papillomavirus types with vulvar neoplasias." J Obstet.Gynecol.Res.22. 1-8 (1996)
• [文献書誌] Kitagawa,K.,Yoshikawa,H.:"Genomic organization of human papillomavirus type 18 in cervical cancer specimens." Jpn.J.Cancer Res.87. 263-268 (1996)
• [文献書誌] Kikuchi,A.,Yoshikawa,H.:"Intracervical ultrasonography with a high-frequency Miniature probe;A new diagnostic method for early invasive cervical cancer." Radiology. 198. 411-413 (1996)
• [文献書誌] Onda,T.,Yoshikawa,H.:"Assessment of metastases of aortic and pelvic lymph nodes from epithelial ovarian carcinoma;A Proposal for Essential Sites for Node Biopsy." Cancer. 78. 803-808 (1996)
• [文献書誌] Nakagawa,S.,Yoshikawa,H.:"Type of human papillomavirus is related to clinical features of cervical cancer." Cancer. 78. 1935-1941 (1996)
• [文献書誌] Matsumoto K.,Yoshikawa,H.:"Antibodies to human papillomaviruses 16,18,58,and 6b major capsid proteins among Japanese females" Jpn.J.Cancer Res.(in press).