研究概要 |
1. 子宮頚癌患者46例とコントロール138例でHLA Class II haplotypeを検討した結果、最初に関連が指摘されたが、現在では否定的報告の多いDQB1-03は、本研究においてもコントロールと全く差がなかったが、DRB1-1501,DQBl-0602は他の報告どおりリスクが高い傾向にあった。リスクを低下させるという報告の多いDRB1-13については、子宮頚癌患者には1名のみで(コントロール15%)、有意にリスクが低いという結果であった。 2. HPV16VLP抗体陽性子宮頚癌患者20例、HPV16VLP抗体陽性CIN患者29例、HPV16VLP抗体陽性の健常女性18例について、IgG2/IgG1 ratioを検討したところ、IgG2優位(IgG2/IgG1 ratio>1.0)は、癌患者で5%、CIN患者で48%、健常者で94%であった。1年以上経過観察したHPV16VLP抗体陽性のCIN12例患者のうち、IgG2優位の6人中5例は正常に消退し、IgG1優位6人中1例のみが消退した。以上より、細胞性免疫応答が生じていることを示すと考えられるIgG2のレベルが高い患者はCINが消退する傾向にあり、L1蛋白質を標的とする細胞性免疫の成立がCINの予後に関わっていることが強く示唆された。 3. 子宮頚癌発生過程におけるFHIT遺伝子の発現異常を解明するために、子宮頚癌32例(扁平上皮癌25例、腺癌・腺扁平上皮癌7例)、CIN18例(CIN I;14例、CIN II/III;14例)においてRT-PCRおよびcDNA塩基配列決定によりその発現を検討した。欠失を伴う異常なFHIT mRNA遺伝子の発現が子宮頚部扁平上皮癌で44%に検出された。腺癌などでは発現異常はなかった。また、CIN 1では検出されないが、CIN II/IIIでも36%に検出され、early eventであると考えられた。異常発現のパターンは、exon 5-7の欠失が共通して認められた。CINの癌への進展過程に関与している可能性がある。
|