研究概要 |
顆粒膜細胞における塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)レセプター(FGFR)の制御機構を明らかにするために、まず、ステロイド分泌細胞株の樹立を行った。マウスの卵巣から採取した初期培養顆粒膜細胞にAD4BPならびにSV40T抗原のプラスミドを感染させた。得られた細胞株の4B2はプロゲステロン(P)を大量に分泌する。しかも、cyclicAMP(cAMP)に反応してPの分泌を著しく増加させるだけでなく、絨毛形成、細胞増殖を停止させた。これらのcAMPにたいする性質は、ホルボールエステルである(PMA)によって抑制された。また、スフエロイド形成実験においては、4B2は卵胞におけるような3次元形態を示した。興味深いことには、cAMPによって絨毛形成を示し、分化した発育卵胞におけるのと似た細胞形態を示した。さらに,SCIDマウスから卵巣を摘出した後で4B2を皮下移植した系においては、おおよそ2ヵ月で直径2-5mmの腫瘍形成を認めた。子宮の組織形態は分泌期のパターンを示し,腫瘍がP分泌をおこなっていることを確認した。さて、4B2はbFGFにほとんど増殖反応示さないことから、内因性FGFRがサイレントであり、FGFRを共生発現させてFGFRの機能を解析するのに適切な細胞株と考えられる。
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