我々は、ヒト子宮内膜ならびに内膜癌において、exon5ならびにexon7が欠失したエストロゲン受容体(ER)α mRNA variantsが存在することを初めて明らかにし発表したが、本研究の目的は、これらのヒト子宮内膜癌の発癌・進展におけるこれらのvariantsの生物学的意義の解析を行うことであった。このために、ERの遺伝子発現の調節機構を解明することが必要不可欠と考えられた。そこで、ERαならびにβの遺伝子発現機構の解析を行った。この結果、ヒトERαならびにβの遺伝子発現が多重非翻訳第一エキソンならびに多重プロモーター機構によって調節されていることがはじめて明らかになった。この遺伝子発現の調節機構をより詳細に検討するため、非翻訳第一exonならびにプロモーター機構により遺伝子発現が調節されている代表的な遺伝子であるアロマターゼ(エストロゲン合成酵素)遺伝子について詳細な解析を行った。さらに、子宮内膜癌におけるERαならびにβ遺伝子のプロモーター活性の変化を検討した。以上の成績から、子宮内膜ならびに内膜癌におけるERαおよびβの遺伝子発現機構の詳細がかなり明らかにすることができた。しかしながら、ERの変異株mRNAの発現機構、ことにalternative splicingの調節機構を解明するには至っていない。今後、さらにこの点に焦点を絞って研究を展開する予定である。
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