研究分担者 |
橋本 一昌 大阪大学, 医学部, 助手
徳川 吉弘 大阪大学, 医学部, 助手 (70283786)
竹村 昌彦 大阪大学, 医学部, 助手
東 千尋 大阪大学, 医学部, 講師 (20151061)
佐治 文隆 大阪大学, 医学部, 助教授 (90093418)
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研究概要 |
ゲノムインプリンティング(刷り込み)は、哺乳類胎児の発生・分化に重要な役割を果たし、出生後はその異常(Loss of Imprinting : LOI)が発癌にも関与している。両側発生例を含む31症例から得られた34例の良性卵巣奇形腫腫瘍組織および絨毛癌2症例さらに絨毛癌細胞株7例について、ヒトインプリント遺伝子(IGF2,HI9,SNRPN)の発現を検討した。良性卵巣奇形腫においては(1)ノーザンブロッティングでは、いずれの遺伝子の発現も低レベルであったが、RT-PCR法では全例増幅・解析可能であった。(2)PCR-RFLP法では、約半数の症例でLOHが認められ、腫瘍が減数分裂中あるいは終了後から生じていることが示された。宿主・腫瘍両者でヘテロ接合性が確認された症例では、IGF2,HI9で各々50%.86%と高率に両アレル性の発現が認められた。(4)SNRPNは,全例単アレル性の発現を示した。(4)IGF2のエクソン9領域とHI9の5′-領域は遺伝子の発現様式とは無関係に低メチル性であった。以上のことから,良性卵巣奇形腫におけるIGF2,HI9両アレル性発現は,悪性腫瘍におけるLOIとは異なり、女性配偶子形成時のインプリンティングの消去を反映している可能性がある。IGF2,HI9と遺伝子座位の異なるSNRPNの刷り込みが保たれていたことから,各遺伝子において刷り込みの方法や時期が異なっている事が推察される。良性卵巣奇形腫は,ヒトにおけるゲノムインプリンティングの消去・形成の解析モデルになりうると考えられる。絨毛癌では2症例中1例がIGF2、HI9の両アレル性の発現を示し、絨毛癌細胞株ではIGF2で4/4、HI9で3/4と高率に両アレル性の発現が認められ、絨毛癌組織における結果を指示した。絨毛癌の発生において、インプリンティングの消失に伴うIGF2、HI9の発現異常が関与している事が示された。
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