研究課題
基盤研究(C)
オキシトシン不応に起因する遷延分娩や微弱陣痛は、新生児感染症や子宮内感染症の原因となる。したがって、オキシトシン感受性の予知は、周産期医療の向上に不可欠である。オキシトシンに対する感受性低下の原因としては、以下の3点が考えられる。(1)オキシトシン受容体遺伝子における点突然変異や欠失などの変異による感受性の低下(2)オキシトシン受容体遺伝子mRNAの安定性の低下による発現量の低下(3)オキシトシン受容体遺伝子の転写制御に関与している5‘上流域の塩基配列の変異による転写の抑制(1)について、ヒトオキシトシン受容体のN末端で、糖鎖修飾部位に突然変異を加え、発現させた細胞系で、オキシトシンに対する結合能が変化することを確認した(投稿中)。オキシトシン受容体の多型性については、ヒトで非翻訳領域のCAリピートに関する報告が1件されているのみであるが、筆者らは、アミノ酸配列の多型を既に発見している。また、ヒトオキシトシン受容体に続いてマウスオキシトシン受容体のクローニングを行い、アミノ酸1次構造の比較により、オキシトシンとの結合には第1細胞外ドメインと第2細胞外ドメインが、細胞内におけるG蛋白との結合には第3細胞内ドメインが重要であることがわかった(Mol.Cell.Endocrinol.)。(3)について、未発表ながら、本遺伝子の5‘上流領域に2ヶ所、本遺伝子の誘導に重要であるエレメントを発見しており、ヒト分娩時子宮筋の核蛋白が結合することを、ゲルシフトアッセイで検討中である。このように、in vitroにオキシトシン受容体の機能解析を行うとともに、大阪大学医学部付属病院分娩育児部における分娩記録をレトロスペクティブに解析し、遷延分娩症例より、その原因が、オキシトシン不応症によると考えられる症例を抽出中である。
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