本年度は、まず下垂体前葉でのCINCの産生細胞の同定を試みた。既に我々は予備実験にてCINCが正常下垂体前葉で産生されていること、濾胞星状細胞の細胞株(TtT/GF)からCINCが分泌されていることを確認している。そこで、今回免疫組織化学的手法を用いて下垂体前葉細胞を観察したところ、全細胞の約3%にあたる、形態的に濾胞星状細胞に類似した細胞が抗CINC抗体で特異的に染色された。またTtT/GF細胞においても同様に胞体が抗CINC抗体により顆粒状に染色され、CINCの存在が確認された。次にTtT/GF細胞におけるサイトカインによるCINC分泌を検討した。リポポリサッカライド(LPS)及び腫瘍壊死因子(TNF-α)は、CINC分泌を濃度依存性及び時間依存性に促進した。他のサイトカインであるIL1-α、IL1-β、IL3、GCSF、SCF、GMCSFはCINC分泌に特に影響を及ぼさなかった。 次に我々はCINCmRNAのCDNAを入手しているので、分子生物学的手法を用いて、CINCmRNAの存在の確認及びサイトカインの影響について検討した。TtT/GF細胞から細胞内RNAを抽出し、CINCmRNAcDNAをプローブとして、ノザンブロット分析を行ったところ、1.1kbに特異的なバンドを検出し、TtT/GF細胞においてCINCmRNAの発現を確認した。次にLPS(10ng/ml)でTtT/GF細胞を3時間共培養したのち細胞内RNAを抽出しノザンブロット分析したところ、コントロールに比べ約2倍にその発現が増加した。LPSはTtT/GF細胞において、CINC合成においても促進的に働くことが確かめられた。
|