リンパ節転移は婦人科腫瘍の重要な予後因子の一つである.本研究の目的は、腫瘍細胞では発現しているが正常のリンパ節細胞では発現していないmRNA(ここではサイトケラチン20)をターゲットとしたRT-PCRを行うことによってこのmRNAを特異的に増幅し腫瘍細胞の存在(微小転移)を検出することである.試料として手術時に摘出した腫瘍組織およびリンパ節を用いた.試料よりtotalRNAを抽出し、reverse transcriptaseを用いてcDNAを合成し、プライマーを用いてPCRを行い、その産物を2%アガロースゲルで解析した.本法の検出感度は腫瘍細胞1個/リンパ節細胞10^4-10^6個であった.子宮頚癌17例より採取した腫瘍組織21個(以下同様)、子宮体癌9例(15個)、卵巣癌9例(10個)の合計35例(46個)はすべてケラチン20mRNAの発現が認められた.リンパ節は、子宮頚癌11例より採取された41個中1個、子宮体癌7例より採取された31個中2個、卵巣癌2例より採取された3個中1個、合計20例より採取された75個中4個にケラチン20mRNAの発現が認められた.これらの結果を組織学的検索の結果と比較すると、組織学的に転移陽性と診断されたリンパ節3個はすべてケラチン20RT-PCRで陽性であった.また組織学的に転移陰性と診断されたリンパ節72個のうち1個がケラチン20RT-PCRで陽性と判定された.これらのリンパ節には組織学的検索では検出できない微小転移が存在するものと思われる.以上の結果より、ケラチン20RT-PCRは通常の組織学的検索よりも感度が高いと考えられた.
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