マウス偏平上皮癌細胞株KLN-205にSCC抗原-1cDNA、あるいはベクターのみを導入しSCC抗原-1産生細胞とコントロール細胞を得た。これらの細胞を用いてまずin vitroで増殖能を検討したが両者に差は認められなかった。又type Iコラーゲンを基質とする接着能及び浸潤能を調べたが両者に差は認められなかった。そこでこれらの細胞をヌードマウスの皮下に注入して一ヶ月後の腫瘍のサイズを検討したところ、SCC抗原-1産生細胞由来の腫瘍の方がコントロール細胞由来の腫瘍に比べサイズが有意に大きかった。この腫瘍内におけるアポトーシス細胞をTUNEL法で検討したところ、SCC抗原-1産生細胞由来の腫瘍の方がコントロール腫瘍に比べアポトーシスを起こしている細胞が少ない傾向にあった。又この腫瘍内に浸潤している単核球はSCC抗原-1産生細胞由来の腫瘍の方が少ない傾向にあった。これらのことよりSCC抗原-1はin vivoにおいて腫瘍細胞のアポトーシスを抑制していると考えられた。このことは将来的にSCC抗原を産生している偏平上皮癌においてSCC抗原の発現を抑えることができれば腫瘍増殖能をおさえることができる可能性を示唆していると思われた。
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