これまでのデータではSCC抗原-1のcDNAをSCC抗原を発現していない腫瘍細胞(PCI-51、K562)に導入すると活性化NK細胞によるアポトーシスが抑制されていた。そこで今回SCC抗原-1を形質導入した腫瘍細胞に対しアポトーシスを引き起こす種々の刺激(TNFα、抗癌剤(SN-38)、紫外線)を作用させたところ、いずれの刺激のおいてもSCC抗原-1の形質導入された細胞はコントロール細胞に較べアポトーシスが有意に抑制されていた。一方SCC抗原-2の形質導入細胞は得ることができなかった。これについて過剰発現したSCC抗原-2が細胞に障害をあたえている可能性が考えられる。次にSCC抗原-1cDNAのアンテセンス発現ベクターを構築し、これを用いてSCC抗原発現腫瘍(SKG IIIa)を形質転換しSCC抗原の発現量の低下した細胞株を樹立した。これらの細胞株を抗癌剤(VP-16)の存在下で培養したところ、コントロール細胞に比べ細胞死が有意に増加した。次にマウス扁平上皮癌細胞株KLN-205にSCC抗原-1cDNA、あるいはベクタのみを導入しSCC抗原-1産生細胞とコントロール細胞を得た。これらの細胞を用いてまずin vitroでの増殖能を検討したが両者に差は認められなかった。又typeIコラーゲンを基質とする接着能及び浸潤能を調べたが両者に差は認められなかった。そこでこれらの細胞をヌードマウスの皮下に注入して一ケ月後の腫瘍のサイズを検討したところ、SCC抗原-産生細胞由来の腫瘍の方がコントロール細胞由来の腫瘍に比べサイズが有意に大きかった。この腫瘍内におけるアポトーシス細胞をTUNEL法で検討したところ、SCC抗原-1産生細胞由来の腫瘍の方がコントロール腫瘍に比べアポトーシスを起こしている細胞が少ない傾向にあった。これらのことよりSCC抗原-1はin vitro、in vivo共に腫瘍細胞のアポトーシスを抑制していると考えられた。
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