研究概要 |
過排卵幼若雌ラットを用いた実験系では、黄体期にgrowth hormone(GH)投与はprolactin(PRL)投与とほぼ同様のluteolytic効果を示した。つまりbromocryptine(Brom)投与3日経過後にGH投与を開始するとBromに引き続きPRLを投与した場合と同様に黄体の組織そのものが縮小するstructural luteolysis(SL)が数日で発生する。この時PRLの時と同様にmatrix metalloproteinse(MMP)の活性化増強とapoptosisがおきる。また更にgonadotropin releasing hormone agonistを黄体完成期から投与する事によってもSLが再現出来た。これも同様に黄体のMMP活性の増強とapoptosisが検出された。この時のpro-MMP-2の活性化するmembrane type-MMPの活性化が同時に起こっている事が明らかになった。 ヒト月経黄体を用いて、黄体期初期、中期、末期、月経期のMMP-2発現を検討した。gelatin zymographyでもnorthern blottingでも黄体期末期、月経期の黄体にMMP-2発現の増強が明らかになった。また黄体の膜分画を用いたzymographyにより、pro-MMP-2の活性化作用もやはり黄体期末期、月経期で増強していた。northern blottingでもMT1-MMPの発現増強が明らかになった。更に、MMPのinhibitorであるtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)の発現は黄体期末期、月経期の黄体中TIMP-2発現がやや増加し,TIMP-2の存在下にMT-MMPがpro-MMPを活性化する事が推察された。その時TIMP-1の発現は減少していた。これらがあいまって細胞外マトリックスのremodelingがおこる事がヒト黄体のSLのメカニズムの一つである事が示唆された。またapoptosisの存在も確認されヒト黄体のSLとラットのSLの共通性が明らかとなった。 以上より黄体退縮過程において排卵過程で見られるようなMMPの活性化と卵胞閉鎖過程で見られるapoptosisが起こっているという共通のメカニズムが存在する事が明らかになった。
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