研究概要 |
卵巣癌および子宮体癌の臨床材料を対象に以下の研究を施行した。1.6q27領域に存在する卵巣癌の候補癌抑制遺伝子の単離を目指して,この領域に存在するRELPマーカー,パルスフイールドゲル電気泳動,さらに領域内に位置するコスミドによるexon trappingを行った。2.5つのmicrosatellite markerを用いて,microsatellite instability(MI)を検討した。3.MIへの関与が示唆されている4種のDNA mismatch repair遺伝子(MMR)の異常をDNA sequence,PCR product生成の有無から検討した。その結果,1.6q27の候補癌抑制遺伝子の部位は300kb領域までしぼり込むことができた。exon trapping法により得られた遺伝子断片の解析,コンピュータプログラムを用いたエクソンの解析から,t(6;11)(q27;q23)に関与するAF-6遺伝子を含め4個の遺伝子が同定された。2.子宮体癌症例においては93例中32例にMIが認められた。臨床進行期との関係では,I期14%,II期33%,III期36%,IV期75%,と進行例で有意に高陽性率をしめした。また前駆病変である異型内膜増殖例ではMIは認められなかった。卵巣癌症例におけるMIは,p53の異常や6q27LOHのみられる症例で高頻度を示す傾向がみられた。3.MMRの異常は,14例の子宮体癌症例で検討したが,MLH1,PMS1,PMS2に変異はみられず,MSH2においてはintron splice acceptor siteで36%(5/14)に変異が認められた。以上の結果から,6q27領域に存在する卵巣癌の候補癌抑制遺伝子の単離が目前になった。子宮体癌や卵巣癌の発生にDNAミスマッチ修復異常の関与が示唆された。
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