研究概要 |
平成8年度は、子宮体癌細胞における糖鎖発現の改変が細胞機能に与える影響について以下の結果を得た。 1.ガラクトース転移酵素(GT)の遺伝子導入によるトランスフェクタント作成 まず子宮体癌由来培養細胞株へのβ1,4ガラクトース転移酵素(GT)の導入に先だって、分化度の異なる子宮体癌由来培養細胞株におけるβ1,4GTの発現をノーザンブロッテイングならびにウエスタンブロッテイングにより解析した。その結果、中分化型体癌由来株であるSNG-Mにおいてβ1,4GTのmRNAおよびタンパクの発現レベルが低いことが判明した。そこで、SNG-Mにネオマイシン耐性遺伝子に付加したβ1,4GTcDNAをリポフェクシン法にて導入した。なお、ヒトβ1,4GTcDNAはpCAGGS表現ベクターに挿入されたもの(米国The Burnham Institute 福田道子博士よりご供与)を用いた。β1,4GTcDNA導入株の中で、5種類のトランスフェクタントについてβ1,4GTmRNAならびにタンパクの発現は親株であるSNG-Mに比べ亢進していることが明らかになった。 2.β1,4ガラクトース転移酵素(GT)高発現亜株を用いた細胞機能に関する検討 1.にて作成した子宮体癌由来培養株SNG-Mのβ1,4ガラクトース転移酵素(GT)の高発現亜株を用いてin vitroにおける細胞外基質との接着態度を検討した。ラミニンとコラーゲンタイプIVを用いてトランスフェクタントならびに親株の接着細胞数を解析した。その結果、β1,4ガラクトース転移酵素高発現亜株は親株に比べラミニンあるいはコラーゲンタイプIVに対する接着細胞数は多かった。このことより、体癌細胞はβ1,4ガラクトース転移酵素を高発現させることによって細胞外基質への接着能が高くなる可能性が示唆された。
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