研究概要 |
エストロゲンが発症あるいは疾患の進行に関連すると考えられる産婦人科疾患は、昨年報告した子宮体癌の他に子宮筋腫、子宮内膜症の二つが代表的なものである。 子宮筋腫はおそらく最も頻度の高い婦人科疾患であり、性成熟期に発症し、エストロゲン濃度の高い間はしだいに増悪する。しかし閉経を過ぎエストロゲンの血中濃度が低下すると次第に縮小する。最近臨床で用いられるようになったGn-RHアゴニストも血中エストロゲンの低下をねらった治療法である。子宮筋腫で手術を行った58例の患者につきエストロゲン受容体の解析を行った。PP,Pp,ppが対照でそれぞれ31例(20.7%),76例(50.7%),43例(28.7%)に対し子宮筋腫ではそれぞれ12例(20.7),31例(53.4%),15例(25.7)であった。子宮筋腫と対照でそれぞれの遺伝子型に差はみとめられなかった。 子宮内膜症もエストロゲンの刺激で増悪する代表的な疾患であり、最近頻度が急激に増加している。その原因と環境ホルモンとの関係も言われている。手術で確認された56例の子宮内膜症の患者のエストロゲン受容体遺伝子の分析を行った。PP,Pp,ppはそれぞれ7例(12.5%),35例(62.5%),14例(25.0%)であった。これは子宮筋腫と同様対照群との差を認めなかった。 以上のことからエストロゲンがその発症や進行に影響すると考えられる疾患のうち子宮筋腫および子宮内膜症ではエストロゲン受容体遺伝子多型の頻度は対照と差が無かった。
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