研究概要 |
昨年度までの本研究においてエストロゲン受容体遺伝子多型と婦人科疾患との関連について、特に子宮内膜癌、子宮筋腫、子宮内膜症について検討してきた。この3疾患のうちエストロゲン受容体遺伝子多型となんらかの関連が認められたのは子宮内膜癌であった。子宮内膜癌の症例数を増加させるのは困難であるため、本年度はそれぞれの症例について詳細な病歴調査を行い、検討を加えた。エストロゲン受容体遺伝子多型はPP,Pp,ppに分類でき、子宮内膜癌は対照に比べppが多い傾向を認めている。 子宮体癌の例数を2倍程度まで増加させるとこの比率で有意差が出る可能性があるが、現時点でただちに例数を増加させるのは不可能なので、それぞれの症例について病歴と聞き取りによる調査を実施した。まず癌の家族歴について検討すると、家族歴のあるものはPP、Pp,ppの順に18.2%,20.0%,27.3%と次第に増加する傾向が認められた。また患者本人の腫瘍性疾患の既往歴についても、PP,Pp,ppの順に18.2%,24.2% 36.4%と同様の順で増加する傾向であった。進行期分類においても予後のよいIa期はPPで18.2%,Ppで16.0%認められたが、ppでは0%であった。また逆にII期以上に進行した症例は、PP,Pp,ppの順に9.1%,16.7%22.7%であった。組織分化度においても予後不良のG2+G3のものはPP,Pp,ppの順に20.0%,42.9%,40.0%であった。以上の結果から、エストロゲン受容体遺伝子多型と子宮内膜癌については、その発症との関連性は今後の検討課題であるが,発症した例ではPP,Pp,ppの順に進行期の進んだもの、また組織型でも悪性のものが多く、癌の進展とこの遺伝し多型に関係があると考えられた。
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