研究概要 |
1.(1),マウス卵は受精により細胞内プールからカルシウムを放出し、細胞内カルシウム濃度を上昇させる。このカルシウム上昇により、表層顆粒が放出され、透明帯の蛋白ZP2がZP2fへと加水分解される。この転換を、卵1個ごとに透明帯を採取して電気泳動することにより、泳動度の相違としてとらえることが可能となった。この透明帯蛋白の転換率を求めることにより、細胞内カルシウム濃度上昇の指標とし得ることが確認された。 (2),第2極体放出率、前核形成率については形態学的に観察し、卵活性化の指標とした。 (3),細胞周期の調節因子であるcdk/cyclin複合体の活性をヒストンH1蛋白の燐酸化率により検討し、卵活性化に伴って燐酸化率が漸減することを見いだした。 2.(1),3量体GTP結合蛋白(G蛋白)のbeta/gammaサブユニットを捕捉し、その機能を抑制する蛋白phosducinをマウス卵にmicroinjectionした。その後、培精し、受精による卵活性化に対するphosducinの影響を、上記の諸指標を用いて検討した。 (2),beta/gammaサブユニット捕捉下でも透明帯蛋白の転換は誘起されたが、第2極体放出率、前核形成率は容量依存性に有意に抑制された。Phosducinとfree beta/gammaサブユニットとを同時にmicroinjectionすることにより、この抑制効果は打ち消された。ヒストンH1蛋白の燐酸化率の漸減も、beta/gammaサブユニット捕捉下で抑制された。 (3),卵活性化は、精子の卵表面への接着により開始されるが、この際、G蛋白を介した情報伝達が行われていること、特にbeta/gammaサブユニットが関与し、透明帯蛋白の転換とその後の細胞周期再開とが異なる系で制御されている可能性があること、が示唆された。
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