1.マウス卵は受精により細胞内プールからカルシウムを放出し、細胞内カルシウム濃度を上昇させる。このカルシウムが、受精に引き続いて起こる卵の活性化のトリガーとなる。体細胞の細胞内カルシウムプールに存在するカルシウムチャンネルには、IP_3受容体とリアノジン受容体とがあり、細胞ごとにどの構成はさまざまである。 2.本研究では、マウス卵にも (1)RT-PCR法により、リアノジンの2型および3型受容体mRNAが存在すること、 (2)免疫沈降法および免疫組織化学的研究法により、脳に存在するのと同型のリアノジン受容体蛋白が存在すること、 が初めて確認された。マウスのリアノジン受容体mRNAの塩基配列を決め、既に報告されていた家兎のものと比較することができた。 3.リアノジンを卵にmicroinjectionすることにより、マウス卵に存在するリアノジン受容体は他の体細胞と同じ機能を有するものであることが示された。リアノジン受容体の生理的リガンドと考えられるcyclic ADP riboseのmicroinjectionによっても、この受容体は機能した。細胞内カルシウム濃度を直接測定してはいないが、その生物作用としての透明帯蛋白の加水分解を指標として用いた。 4.過剰量のリアノジンをmicroinjectionすることによりリアノジン受容体を抑制した条件下で、マウス体外受精を行ったが、卵活性化は正常に進行した。このことより、マウス卵ではIP_3受容体の方が主に機能していることが推察された。 5.免疫組織化学的研究により、リアノジン受容体の卵における空間的配置が、卵の成熟過程において変化することが示された。未熟卵と成熟卵のおける細胞内カルシウム放出能力の差異は、カルシウムプールの空間的配置の相違によるものであることが推察された。
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