研究概要 |
前年度の成績にもとづき,卵巣癌細胞株2008を用い12-0-Tetradecanoyl phorbol acetate(TPA)48時間の前処置(TPA48)による白金製剤感受性増強作用機序につき検討した。まず,CdCl_2感受性の変化は細胞内メタロチオニン濃度を反映することを利用し、TPA48によるメタロチオニン含有量の変化を検討した。その結果、TPA48処理細胞ではコントロールに比べ約3.7倍のCdCl_2耐性をきたしメタロチオニン濃度の増加が示唆され、細胞内メタロチオニン濃度の変化はTPA48の感受性増強因子とはならぬことが確認された。しかし、HPLCによる細胞内グルタチオン濃度の測定ではTPA48処理によりグルタチオン濃度は約30%の有意減量を認め、TPA48処理の増感作用の一因子であると考えられた。更にこの効果はシスプラチン(DDP)耐性細胞2008/C13*5.25においても認められ本細胞においても同様の機序による白金製剤感受性増強作用が出現しているものと考えられた。昨年TPA48による細胞内薬剤取り込みの増加を示したがこれらを総合的に検討するとTPA48処理による薬剤感受性増強作用には、複数の因子が関与していることが示唆された。 本年度は、更にプロティンキナーゼC(PKC)刺激伝達系に関与するPhosphatidylinositol代謝系の一酵素であるPhosphatidylinositol4ーkinase(PI4K)に着目し、本酵素活性にともなう薬剤感受性のコントロール能を検討した。PI4K活性制御剤としてはOrobol(Or)を使用した。2008細胞に対するOrの作用は細胞処理後Or添加までの時間(T)に依存し、処理後24hr(T24)ではPI4K活性に有意変動を認めなかったが、48hr(T48)では約10倍の亢進を認めた。
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