妊娠ラットの片側子宮動脈結紮が胎盤、胎仔諸臓器の血管内皮型一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現に及ぼす影響 「実験動物と方法」妊娠18日齢に開腹し、片側の子宮動脈を結紮し、妊娠21日に再度開腹の後、胎仔、ならびに胎盤を摘出した。胎仔より脳、肝、腎を摘出し、胎盤とともに液体窒素で凍結した後、-80℃で保存した。「Messenger RNA(mRNA)の定量」AGPC法によりtotal RNAを各臓器より抽出し、逆転写酵素によりc DNAを作成した。ラットのe NOSに特異的なprimerを合成し、PCR法によって目的とするm RNAと同じprimerを結合しながら、中間部分の遺伝子構造ならびに生成産物のサイズが異なるmimic DNAを合成した。目的とするm RNAから転写されて生じたc DNAと既知量のmimic DNAを混合し、競合的PCRとすることにより、m RNAの同定を行った。本測定法の感度は、^<32>Pを用いたサザンブロット法による検出法とほぼ同等であった。「成績」子宮動脈結紮側の胎仔は非結紮側の胎仔に比して、有意に体重が少なかった。臓器重量では、胎盤、肝、腎は非結紮側より有意に減少したが、胎仔の脳重量には変化がなかった。eNOSのm RNAでは胎盤で結紮側が非結紮側に比べて有意に低下していたが、腎では結紮の影響は認められなかった。また、肝、脳のe NOS m RNA発現は少なく、結紮の影響は判定不能であった。「考察」子宮動脈結紮による慢性胎児低酸素症では一酸化窒素同様、血管内皮細胞で産生されるエンドセリンと比較すると、遺伝子発現のレベルでは低酸素負荷による変化は少ないと考えられた。
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