卵巣癌や体癌の末期では腹水の貯溜が起こるが、このような状態は患者のquality of lifeを著しく悪くする。我々は体癌を中心にproto-oncogeneであるc-erbB-2の腫瘍増殖と転移に関わる意義を報告してきた。その過程において、ヒト正常estrogen receptor(ER)を安定発現させたc-erbB-2を挿入したNIH3T3細胞は、対照に比較し、nude mouseへの腹腔内投与による腹水貯溜が対照に比較し抑制された。このdouble transfectantではc-erbB-2の発現は低下しておらず、この腹水抑制効果がc-erbB-2発現の抑制によるものではないと結論した。そこでヒト正常ERを安定発現させたNIH3T3細胞の培溶液上澄を用いてc-erbB-2の細胞内domainのリン酸化をin vitroで検討した。その結果低分子量分画にリン酸化を抑制する物質が検出された。一方ヒトの高転移性、腹水性の子宮体癌細胞(漿液性乳頭状腺癌)を用いたin vivo assayでも同様の効果が見られた。しかしこの分画には癌細胞の増殖を抑制する力は見られない。現在この物質の解析をおこなっている。
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