本年度はATP分解産物のアデノシン、ヒポキサンチン、尿酸をも含めたプリン代謝産物の胎児血中濃度を、慢性低酸素症の生体モデルである子宮内胎児発育遅延胎児において臍帯穿刺による胎児採血を施行し、以下の結果を得た。 1、胎児仮死におけるアデノシンの意義 (1)、胎内において胎児低酸素症およびアシドーシスなどの病態が生じるとその産生が即時に増加する。 (2)、胎児脳に作用して胎児脳血流、胎児呼吸様運動などの胎児行動を制御する。 (3)、子宮胎盤循環の調節に関与する。 以上の結果よりアデノシンは胎児の脳組織を含めた全身的な組織保護作用を保持する可能性が示唆された。 2、胎児仮死におけるヒポキサンチンの意義 (1)、胎内における胎児アシドーシスなどの病態が生じるとその産生が増加する。 (2)、胎児脳内のフリーラジカル産生などに関与し、直接的に脳組織障害に関与している可能性がある。 以上の結果から、胎児胎盤循環におけるプリン代謝の解析は、胎児脳障害の発生を予知し、さらに胎内予防の可能性を示唆するものである。
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