研究概要 |
研究代表者は1990年以来、胎児におけるアデノシンの生体防御機構に関し、羊胎児慢性実験モデルを用いた研究を行ってきた。そしてストレスに対応して、ATP分解産物であるアデノシンの組織での産生が増加し、組織における酸素消費量を減らすことで子宮内の限られた酸素供給に適応していることを明らかにしてきた(J Appl Physiol 1991,1993.Am J Obstet Gynecol 1994 )。本研究(課題番号:08671937)では、これまでの基礎データを基盤にヒト胎児において臍帯血での解析を試みた。その結果、通常ATP分解経路において可逆的と考えられるアデノシンからヒポキサンチンへの転換が、胎児仮死などのストレスの加重により非可逆的な経路に変化し(Am J Obstet Gynecol 1996 )、最終的に組織ATP蓄積の枯渇を惹起し組織障害につながると考えられた(J Clin Endocrinol Metab 1997)。 さらに羊胎児慢性実験モデルを用い臍帯血流遮断により胎児仮死の病態を作成し、胎児脳温の上昇(脳鬱熱現象)が脳組織障害の第一段階であり、これに反応してプリン代謝が変化し、主に脳血流量を調節することで脳温の恒常性を保持していることが明らかになった(Pflug Arch Eur J Phy 1998)。
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