妊娠中毒症においては、血小板凝集亢進状態が存在することは良く知られいる。今回我々は、この病態において胎児胎盤系のアデノシン分泌が増加し、胎児の胎内適応調節機構に関与することを明らかにした。また、アデノシンと密接な関係を保持する過酸化脂質の分泌も妊娠中毒症において明らかに亢進していることも同時に明らかにした。 さて、アデノシンは強力な血小板凝集抑制作用を保持していることから、妊娠中毒症の血小板凝集亢進状態の改善に関与している可能性が考えられる。 したがって、今回我々は、アデノシンの強力な血小板凝集抑制作用に着目し、妊娠中毒症における胎児胎盤系アデノシンの分泌と血小板凝集抑制作用の関係を検討することを目的として以下のことを明らかにする予定である。 (1)妊娠ヤギ胎仔における胎児胎盤系のアデノシンの分泌と血小板凝集抑制作用との関係の検討 妊娠ヤギにおいて人工的に胎盤循環不全を作成し、胎児胎盤系のアデノシン産生と血小板凝集抑制作用とを検討する。 (2)妊娠中毒症のヒト胎児臍帯静脈血漿アデノシン濃度と血小板凝集抑制との関係の検討 臍帯静脈の血漿アデノシン濃度は胎児胎盤系のアデノシン産生を反映する。したがって、妊娠中毒症の胎児臍帯静脈血を採取し、アデノシン濃度を測定し血小板凝集抑制作用との関係を検討する。
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